仕事帰りアパートの部屋のカギを回したら、カギが折れてただ絶句した私

バブルの時代は少なくとも今より確実に仕事が忙しく、その量も尋常ではなかった分、充実していた気がします。特に残業自体があたりまえというのは今からでは考えられないことでしたから、とにかくなんとかその日のうちに仕事を終えたいという気持ちでいっぱいでした。
会社も繁忙期に入ると社員が残業していることが常態化していましたが、とにかくその一週間は本当にたいへんで、帰宅するのが深夜になることがずっと続いていたある日のことです。その日もなんとか緊急性の高い仕事だけをやり終えて帰宅するころには終電もなくなりかけていました。それでもなんとか電車で帰ることができたので、その日はまだましだったのかもしれません。アパートのカギを取り出し、鍵穴に差し込んで回そうとしたとき、突然「事件」が起きました。

確かにカギを差し込む瞬間に、なにかにひっかかるような感覚があったのは事実です。一瞬ほかのカギを差し込んでしまったのかと思いましたが、そんなはずはないと気を取り直し、カギをぐるりと回そうとした瞬間、根元からカギが折れてしまいました。
人間というのは予想できない出来ごとに見舞われた瞬間、思考が停止してしまうことがあるようです。そのときわたしは時間が止まったようにただ立ち尽くしてしまいました。

どのくらいの時間そうしていたかは覚えていませんが、最初に考えたのは、接着剤でなんとかならないかということでした。
折れたカギの一部、先端は鍵穴のなかに残ったままですから、手元に残った一部と折れた先端を瞬間接着剤かなにかで再びつなぎ合わせることが出来れば、ドアのカギを開けることができるのではないかと考えたのです。
もちろんそんなことは不可能で、最後には鍵屋さんを呼んで対応してもらったのですが、最初に考えたことをその鍵屋さんに話すと「絶対にやってはいけないことです」と言われました。カギも人間も疲れてくるとトラブルを起こすものなのですね。