まだ一人暮らしをしていたころのこと。わたしは大学生のころ安いアパートに住んでいたのですが、そこは大家さんが海外に住んでいてほとんど日本にいないという状況でした。そのせいでしょうか、なにかあっても管理人さんとなかなか連絡がつかず、たとえば水道の蛇口が故障してしまっても、修理してもらうまでに一週間以上かかるなんてことはザラでした。
その当時、バイトと学校での生活に明け暮れていたわたしにとって、アパートは寝泊まりするだけの場所になっていましたから、あらかたのトラブルについてはすぐにどうにかしてほしいという緊急性がなかったので、管理人の対応が遅いこともそれほど問題ではなかったのです。
ところがその夜起こったトラブルは、さすがに緊急対応が必要だったので、とても困ってしまいました。大学の新入生歓迎コンパに参加したわたしは、ずいぶんと酔っぱらって帰宅しました。次の日はバイトが朝から入っていたので早く寝たかったので、朝までカラオケに行こうとするみんなの誘いを断り、終電を乗り継いでなんとか帰宅したのでした。
ところが家の前までたどり着いたわたしは、自宅のカギがないことに気がつきました。
最初は酔っぱらった頭が働かず、何度もポケットやカバンのなかをゴソゴソと探し続けましたが、そのうちに酔いもさめてきたこともあり、だんだんと冷静さを取り戻してきたわたしは、本格的に鍵を紛失したことに気がついたのです。
もはや電車も動いていない時間ですから、どこか友人宅へ泊めてもらうことも不可能です。さんざん悩んだ挙句、鍵屋さんを呼んでドアを開けてもらうことにしました。やってきた鍵屋さんは、まずわたしに「大変でしたね、大丈夫ですか」と声をかけ、深夜で酔っ払い相手でも嫌な顔一つせずに仕事をする人でした。すっかりその鍵屋さんが気に入ってしまった私は、後日またその鍵屋さんに連絡、大家さんとも相談して鍵交換をすることにしたのでした。
こちらで古い玄関の鍵を交換しました